「提携が不可逆に進めば統合へ」現場が見る落としどころ

 ホンダの元幹部は早期の経営統合については不透明という見方を示す。

「三部さん(敏宏社長)にとって、経営統合をまとめられなかったのは明らかに大失点。中でも致命傷になったのは日産に株式交換による子会社化案を持ちかけたことで、相互信頼は完全に崩れた。

 その条件を引っ込めて統合話を在任中に蒸し返すとなると、ホンダが譲歩する形になりますが、強い自負を持つ三部さんはやりたくないはず。可能性があるとすれば三部さんが社長在任6年となる2027年4月が近づいてきたタイミングかもしれません。三部さんの在任期間の成果を厳しく見る声もあり、現状、四輪部門の衰退を食い止められていません。自分の引退の花道がいよいよ日産との経営統合しかないとなった時、経営上の選択肢として再浮上する形は考えられなくもないでしょう」

記者の質問に答えるホンダの三部敏宏社長(2025年5月、写真:共同通信社)

 別の間接部門幹部は、もう少し可能性があるとみる。

「ホンダという組織全体がプライドやこだわりが強いのは事実ですが、それを誇示する材料は尽きつつあります。中国やインドなど、多くの海外事業が行き詰まっているうえ、伊東さん(孝紳元社長)時代の開発縮小がたたって先端分野でも存在感を示せていない。

 ソニーとの協業によるアフィーラは、結果はまだ出ていませんが、下手をするとホンダの開発・商品力の課題が露呈しかねない。この流れを変えるには日産との提携くらいしか手がないことは経営陣も十分分かっているはず。日産の社長が替わったことで、改めて対話を行う可能性はあると思います」

 先に述べたようにホンダと日産は統合話とは別に、包括提携を模索している。特に規模のメリットが要求されるソフトウェア部門、電動プラットフォームの統合、AI(人工知能)の共同開発などについては、協業を進めなければ競争力の確保が難しくなる懸念があるため、同床異夢であれ積極的に協力関係を築くしかない。

「両社が独立した状態では、技術を持ち寄って内容を精査し、1+1をしっかり2にしていくような取り組みにするのは難しい。お互いに本当にかわいいのは自分であって、技術を盗まれる結果になったら目も当てられないからです。プロジェクトを進めていけば、結局不可逆的なパートナーシップを結ぶ、言い換えれば経営統合が必要という結論に至るはず」(前出の間接部門幹部)

 もっとも経営統合はあくまで両社のリソースをフルに融合させるための手段であって、それをやったら自動的に両社が融和して相乗効果を出せるというわけではない。いったん物別れに終わった両社が肝胆相照らすような信頼関係を築くのは簡単ではない。

 両社が経営統合を果たせたとして、それで本当に世界の自動車業界のトレンドをリードする勢力になれるかどうかは未知数。前述のように自動運転、電動化、AI、内燃機関などの研究開発では両社がもたついている間に世界のトップレベルははるか先に行ってしまった感がある。

2025年3月25日、報道各社のインタビューで、ホンダとの再協議を排除しない方針を表明した日産のエスピノーサ社長(写真:共同通信社)