得意領域を補完できても成功が約束されない理由

 ただ、両社の研究開発のポテンシャル自体は決して低いものではない。技術の得意分野の重複が少なく、相互補完についても結構期待が持てる。経営統合の組み合わせとしては、20世紀のダイムラー・ベンツとクライスラーのような規模だけを追う統合に比べれば相当マシなほうだと言っていい。

 問題はホンダと日産の企業風土だろう。出自も性格もまるで異なる両社だが、共通している欠点がひとつある。それは現場が保身のため、上部組織に対して正確な情報を上げられないということ。

 日産は一連の経営危機の入口となった2024年度第1四半期の決算の席上、内田誠前社長が「第2四半期以降は次第に正常化する」とコメントし、決算見通しの修正も小規模なものにとどまっていた。

 実際には傷口ははるかに深く、日産の存立を危うくするほどのものだった。なぜ当初、そんな甘い見通しを出してしまったのか。投資家や取引先に対するイメージを保つために数カ月後には明らかになる嘘をつくなどという真似を、社長が主体的にするわけがない。

 判断を誤った最大の要因は、首脳陣に正確な情報が届かなかったことだ。情報が誤ったものであれば、それをもとに立案した対策や将来の事業見通しも自ずと誤ったものになる。経営は状況の悪化を時間が解決してくれるということはない。何が悪い事態を誘発しているのかを突き止められず、有効な手を打てないまま経営危機を未曾有のものにしてしまった。

2025年9月中間連結決算について記者会見する日産のエスピノーサ社長(2025年11月6日、写真:共同通信社)