しかも、地域定着を促すには限界がある。真に必要なのは、地域医療に対する高いモチベーションと確かな実力を兼ね備えた人材を、持続可能な形で生み出すシステムである。この根本的な教育と人材管理システムの再構築なしに、地方の医療インフラを維持することは不可能だろう。

 この多くの課題に対処するためには、大学医学部や公的システムだけでなく、医学部入学前から高いモチベーションを持つ受験生を支える民間の教育システムの存在が不可欠だ。特に、地域医療に対して高い関心を持つ医学部受験生の能力を最大限に引き上げる教育機関の役割は極めて大きい。

医学部専門予備校が全人間的サポートで拓く医師養成の道

 こうした民間教育機関の先駆的な例として注目されるのが、「偏差値40からの医学部合格」を謳う医学部専門予備校の「京都医塾」(京都市中京区)である。同塾は、表面的な合格実績を追求するだけでなく、その教育環境そのものを極めてユニークなものに構築することで、地域偏在という社会的課題への貢献を試みている。

 同塾の教育モデルは、その入り口となる「1泊2日の医学部合格診断」という体験プログラムからして他に類を見ないものだ。驚くのは、京都までの往復交通費や宿泊費といった一切の費用を京都医塾が負担していることだ。

 これは、入塾前に実際の指導や生活環境を肌で感じ、医師になるための覚悟を再確認する場を、塾側が「未来の医師を育てるための投資」として提供しているからだという。

 そして特筆すべきは、同塾が展開する「還流」システムだ。地方の開業医を親に持つ塾生も少なくない同塾には、全国30以上の都道府県から志の高い若者たちが集まる。彼らにとって、四条烏丸校、円町校、京大前校の3校への「京都留学」は、互いに切磋琢磨し、卒業後に再び自身のルーツである地方へと戻っていくことの意義を再確認する場でもある。

 この還流を支えているのは、意識変革を促す教育内容だ。京都医塾の授業は受験合格だけを目的としたものではないという。年間を通して実施される小論文や面接の講義では、医療の偏在をはじめとする様々な医療問題や話題を深く掘り下げ、受験生の医療に対する意識を高めている。