こうしたプロセスを経て、受験生は医療人としての使命感を内面化していく。この早期からの意識改革は実際に成果を上げている。受験当初は必ずしも地元への帰還を意識していなかった塾生が、このプロセスを経て自発的に地域医療の重要性を認識するようになる。結果として、医師免許取得後に自らの意志で地元の病院へと「還流」し、最前線に立つ例も少なくないという。

学費は高額、だがサポート体制は万全

 京都医塾は全寮制ではないが、高卒本科生の9割以上が校舎から徒歩10分圏内の学寮に入寮し1年間通塾している。同塾が提供する環境は、一般的な予備校とはかなり異なる。1日14時間にも及ぶ過酷な学習を支えるため、一人の生徒を13名の講師がワンチームで支える「チーム教育」を導入している。

 また学習面のサポートだけでなく、教務担任や心理士担任(臨床心理士/公認心理師)など複数のスタッフが、生徒が長い受験生活を戦い抜けるように、生活リズムやメンタル面の些細な変化までを見守り、生活面を支える。さらには、校舎内に塾生専用の本格的なジムが併設されているほか、常駐の整体師による身体ケアを受けられるブースもあるという。

 入試本番の時期には「受験サポートツアー」を実施する。スタッフが試験会場まで同行・送迎し、宿泊や食事の手配までを全面的にバックアップすることで、生徒が全国どこでも「いつもの環境」で実力を出し切れるよう徹底して寄り添うのだという。

 医学部受験は知力だけでなく、体力と精神力が求められる持久戦である。学習効率を最大化させるために、精神面と肉体面の双方をベストコンディションに保つ。こうした全人間的なサポートは、将来、激務が予想される医師という職業に必要な自己管理能力を養うことにも繋がるという。

 医学部受験の競争が激化する中、同塾の高卒生 医学部合格率は61%(入塾時 偏差値40以上の医学部専願者)に達している。厳しさを増す受験環境の下でも質の高い人材を医学部に合格させ、地域医療に貢献する医師を輩出していることから、その教育プログラムが、これからの医療にとって有効であると言えるだろう。

「京都医塾モデル」の唯一のダウンサイドを挙げるならば、それは費用の高さだろう。一般的な予備校の年間費用相場が200万円前後であるのに対し、京都医塾(高卒生科)の年間学費は約1000万円を超えることもある。入学前の1年間に投じる額としては極めて高額であることは確かだ。

 それでもなお、この門を叩く受験生が絶えないのは、価格に見合う圧倒的な手厚さと「合格」という結果への信頼があるからだ。事実、現在同塾には40代の塾生も在籍しており、キャリアを捨ててでも「絶対に医師になりたい」と願う人々の、最後の駆け込み寺となっているのである。