サナエノミクスの死角
では、サナエノミクスに死角はないのか?
まず心配なのは、高市総理が容認したとされる日銀の金融引き締めである。植田総裁は「緩和的環境下での調整」と説明しているが、短期金利を0.25%上げて0.75%にしたことで長期金利は一時、2.1%をつけた。住宅ローンは変動金利も固定金利も上昇する。
アベノミクスからの転換を図る植田総裁は、更なる利上げ姿勢を示している。日銀の言う経済に影響を及ぼさない「中立金利」の天井は2%である。しかし、直近の食料品とエネルギー価格を除いた一般物価上昇率は1.6%であり、物価目標2%に届いていない。
金利を上げたら6%台の食料品価格が下がるのだろうか? 企業のアンケート調査をもとに来年も賃上げが行われるだろうという予測でもって、利上げを急ぐべきではない。実質賃金が充分プラスになれば、需要牽引型の物価上昇が起きる。それを確認してからでも遅くはない。
そもそも植田氏は、2023年4月に日銀総裁に就任してから、お金の量も急激に減らし続けているのだ。日銀の保有長期国債残高の前年比のグラフ(図2)を見れば一目瞭然だ。
図2:保有長期国債の前年比グラフ(出典:日本銀行)
日銀バランスシートで現金・当座預金がお金の量(ベースマネー)となるが、12月20日現在で前年比約71兆円も減っているではないか。これがどうして「緩和的環境」なのか?
しかも、植田総裁は日銀当座預金の全額に利息をつけ始めた。直近で467兆円だから0.75%の付利は年間3.5兆円の計算になる。民間銀行なら当座預金口座の利息はゼロ。金融機関は利上げで十分儲かるのに、本来国庫に入るべきお金を更なるミルク補給に当てるのは、日銀所管の業界向け政策と言わざるを得ない。
中央銀行の独立性とはもともと銀行のためにあるのだろう。実際、歴史的には国際金融資本が国家の通貨高権を手に入れるために中央銀行が創設されている。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の株主名簿は存在しない。しかし、今の時代、中央銀行は政府の子会社であり、日銀のやり方はあまりにも露骨過ぎる。
高市総理は遠慮して何も言わないが、平成の始めに日本経済は日銀の暴走によって谷底に落ち、長期停滞を強いられた苦い経験を想い起こすべきだ。財政政策と金融政策が別々の方向を向いていると碌なことはない。