息苦しさの中でどう生きるか
──何が「ハラスメント認定」を受けるかわからない世の中で、少しでも肩の力を抜いて生きていくためのコツはありますか。
辛酸:ハラスメント規範が厳格になりすぎているせいか、上の世代が不適切な発言をすると「禁断の笑い」が起きることもあります。
60代くらいの歌手の方のコンサートに行ったときに、その方が前の方に座っているお客さんの体重をいじったり、70代くらいの医師の方が講演会で「女性が3人集まると怖いですね。何歳まで女性と言うのかわからないですけど」などとアウトな発言を連発していました。
そういうのはダメだという社会にいると、そんなアウト発言にむしろおかしさを感じます。自分が言われたら傷つくと思いますが、社会が禁止するほど、かえってそのズレが笑いを生むのかもしれません。

一方で、自分がイライラしたり満たされなかったりするときには、ハラスメントや炎上の話題を見て、自分の怒りを誰かの怒りのパワーと一緒に昇華させたくなります。他人への攻撃を傍観したり、ましてやそれに加担したりすることでストレスを解消するのは、あまり健全とは言えません。
Xのトレンドワードに「批判殺到」と出ているとつい見たくなってしまいます。けれども、その気持ちをぐっとこらえて、自然の風景や猫・犬の動画に癒しを求めるほうがいいと思います。私自身、猫が好きなのでイライラしたときは猫動画を眺めています。
殺伐とした気持ちのときは炎上やハラスメントの話題に行くのではなく、平和な話題に興味を向けるのがいいと思います。
辛酸 なめ子
漫画家・コラムニスト
1974年、東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。話題の事象、女性の生き方、スピリチュアル、アート、皇室など幅広いテーマで執筆。著書に『大人のコミュニケーション術』『新・人間関係のルール』『大人のマナー術』(以上、光文社新書)、『女子校育ち』(ちくまプリマ―新書)、など多数。
関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
