「神様からハラスメントされている世代」

──世代間の価値観の違いとは?

辛酸:先日、オンラインでハラスメント関係の研修に参加しました。そこで、Z世代の方が話していたのですが、彼らは危険なことや不快なことをできるだけ避けるように育てられたそうです。危険な遊具は撤去され、嫌いな給食は残してもいいという具合です。

 少し上の世代は、ひたすら忍耐を強いられる教育を受けてきましたが、それとは対照的な環境で育ったことで、ネガティブ耐性が低くなったのではないかと分析していました。もちろん、Z世代の全員が全員そうだとは言いませんが、そういう人が割合的に増えているのかもしれません。

 また、ボキャブラリーの認識の違いもあります。Z世代の方は、「うざい」や「キモイ」といった感情を「ハラスメント」と表現する傾向があるそうです。

 その研修では、上司が部下を飲み会に誘うとセクハラと言われ、気を遣って誘わないと今度はパワハラと言われるというエピソードも紹介されていました。もはや、どうしたらハラスメントと言われずに済むのかわかりません。世代間でのコミュニケーションが非常に難しくなっているのです。

──私自身、若い頃には上の世代からハラスメントを受け、今では若い世代にハラスメントと思われないか、びくびくして生活しています。ある意味、とても「かわいそうな世代」だと思ってしまうのですが、辛酸さんはどう思いますか。

辛酸:私たちの世代は、神様からハラスメントをされているのかもしれないと諦めています。「カミハラ」ですね。ただ、ひょっとしたらその先に、忍耐力や人に配慮する能力が増すという人間的な成長があるのかもしれません。そう考えると、少しは気が楽になります。

──何でもかんでもハラスメントにしてしまう風潮が息苦しいということに、多くの人が既に気付いていると思います。にもかかわらず、なぜこのような風潮が続いているのでしょうか。

辛酸:現在は「多様性を尊重し、人を傷つけないようにするべきだ」という社会通念が非常に強い時期なのだと思います。良い流れですが、今は過渡期であり、過剰に振れている側面があります。社会が成熟すれば、ここまで敏感にならなくなる可能性はあると思います。