「モビステ川崎・橘公園」に設置されたシェアサイクル(写真:筆者撮影)
神奈川県川崎市と株式会社アットヨコハマは、「モビリティ×情報発信機能」について検証する「モビステ川崎・橘(たちばな)公園」(2025年11月25日〜2026年2月28日)を運営している。周辺で運行する路線バスやデマンド交通「チョイソコかわさき」と、シェアサイクル、電動キックボードシェアリング、カーシェアリングといった多様なモビリティサービスを一体化させた地域交通の要として、将来性を探るのが目的だ。背景には深刻な公共交通の変化がある。現地でその実態を取材した。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
川崎市まちづくり局交通政策室によれば、市内バスの運行便数は平成30年度(2018年度)の1日当たり1万2400便から右肩下がりとなり、令和6年度(2024年度)には1万便を切り、1日当たり9900便まで減少している。
市内の人口が右肩上がりであるのとは逆方向の推移だ。
視点を全国に広げると、路線バス運転者は令和5年度(2023年度)の運転免許統計で60代が19万7000人、50代が19万5000人と、年齢の高い世代が大半を占める。一方で、40代は9万8000人、30代は2万9000人、20代は6500人にとどまっている。
こうした状態が続くと、10年後には全国の路線バス運転手の数は、現状と比較しておよそ3割も減少することになり、川崎市としても何らかの対策を打つ必要があると考えている。
そこで考案したのが、路線バスと多様なモビリティを組み合わせるべく、乗り換え拠点として「モビリティハブ」の設置をすることだ。ハブとは中心を意味するが、移動手段だけではなく、情報を集約したり、人が集ったりする場でもある。
川崎市では、一般的には馴染みの薄いハブという表現からステーションという言葉に置き換えて、市民に対する訴求効果を狙うが、モビリティステーションを略して「MobiSt.(モビステ)」とした。
川崎市とアットヨコハマによる記者会見の様子(写真:筆者撮影)
本稿では社会システムの観点では「モビリティハブ」と表記し、川崎市の試みについては「モビリティステーション」と書いて、これから先の話を続けたい。
なお、川崎市と協業するアットヨコハマとは、神奈川県内のトヨタ関連ディーラー大手のKTグループとウエインズグループが共同出資する企業で、ハードウェアとソフトウェアを駆使したまちづくりを具現化する機能を持つ。
では、「モビステ川崎・橘公園」周辺の地域特性を見ていこう。