仕事と家庭の両立負荷が生む「見えないキャリアの急勾配」

 もともと、2019年から順次施行されてきた働き方改革推進法では、残業時間の上限規制や有給休暇取得の義務化など、働き過ぎを防ぐ施策に重点が置かれていました。長時間労働に対しては、健康を害したり過労死につながったりといった問題がクローズアップされ、かつては美徳とさえ見なされてきた価値観は変わりつつあります。

 また、家庭との両立においても長時間労働は大きなハードルです。共働き世帯が増える中で、長時間労働ありきで設計されている職場環境は、仕事と家庭の両立に取り組む主婦層を中心とする女性たちに過度な負荷をかけてきました。

 いわゆる正社員はフルタイムかつ時に残業もいとわないイメージがひもづいているため、仕事以外にも家事や育児、介護といった負荷がかかる女性にとって選択しづらい働き方に他なりません。いまは少なくなってきたとはいえ、結婚や出産というライフイベントを迎えた多くの女性が退職を余儀なくされてきました。

 また、いまは結婚や出産をしていない女性であっても、自分の将来を考えた時に「もし結婚や出産をしたら、負担の大半を自分が背負うことになる」と想像せざるを得ません。職業キャリアを考えた場合、その負荷は女性にとって“行く手に見える急な上り坂”です。

 正社員で働き続けようとした時、男性の前には平たんな道が続くのに、女性の前には急な上り坂がそびえているのが見える。すると結婚・出産か、正社員として働き続けるか、どちらかの道をあきらめなければならなくなってしまいがちです。そんな暗黙の了解によって形づくられた構造が、女性のキャリア形成を阻む大きな壁の一つとなってきました。

 管理職への昇進についても同様です。より重い責任を負うポジションに就けば、仕事の負荷は増えることが予想されます。その行く手に家オペレーションの負荷も重なるという急勾配の坂も見えれば、管理職への道を回避せざるを得なくなって当然です。