米ニューヨークのタイムズスクエア(Guy PercivalによるPixabayからの画像)
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(英エコノミスト誌 2026年1月3日号)

裕福な国々の有権者は物価高に腹を立てている。政治家は事態をさらに悪化させかねない。

 2025年の「今年の英単語」の候補に挙がったのは、人工知能(AI)が生成する低品質なコンテンツを意味する「slop(スロップ)」、有名人などにファンが一方的な親近感を抱くことを示す「parasocial(パラソーシャル)」、そして閲覧者をわざと怒らせて閲覧回数を稼ぐコンテンツを意味する「rage bait(レイジ・ベイト)だった。

 今年はどんな単語が選ばれるか。

 少なくとも世論調査機関や選挙戦略家たちの間では、「affordability(アフォーダビリティー、モノやサービスが手ごろな価格で買えること)」が早くも本命視されている。この単語の後ろには「crisis(危機)」が続くことも多い。

 トランプ主義の魔力に対して効きそうなスローガンをようやく見つけた米民主党は、これから11月の中間選挙まで、恐らくこれ以外のことをほとんど話さないだろう。

 また、新たミームを作るよりも米国のそれを流用することに長けている欧州では、生活費危機が話題になっている。

 物価がバランスを崩しているという共通認識が大西洋の両岸で形成されつつある。だが、本当にそうなのか。

アフォーダビリティーとは何なのか?

 アフォーダビリティーというのは曖昧な言葉で、正しいと感じられることなら何でも表すことができる。

 文句を言うのをやめて今あるもので満足しなさいと命じるやり方――マリー・アントワネット戦略――は、全体的な雰囲気や装飾がますますベルサイユ宮殿に似てきたホワイトハウスにとって機能していない。

 腹立たしいことに、有権者の要望は矛盾している。

 自分が買い物をする時には物価を安くしてほしいが、自分の賃金は高くしてほしいと言う。

 移民が多いのはいただけないが、安価な労働力は多い方がいいと言ってはばからない。

 家を所有している時は住宅に値上がりしてほしいが、自分の子供が買う時には安くなってほしい。

 経済がうまく行っている国々には、このような両立しがたい状況があふれている。政治家は当然、選挙で勝つために世論調査で有権者に評価されることを言うようになる。

 物価高を招いた現職が有権者に罰せられることが、アフォーダビリティーをめぐる問題の唯一のマイナス面であるのなら、これはそれほど悪い話ではない。

 しかし、もしその問題が「誤診」だとしたら、それを「正す」ために有害な政策が講じられるリスクが高くなる。