韓国で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議後に話しながら並んで歩く米中首脳(10月30日、写真:ロイター/アフロ)
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(英エコノミスト誌 2025年12月20日・27合併号)

習近平にとっては良い1年だった。

 2025年を代表する有力者は米国のドナルド・トランプ大統領だった。大量の大統領令を用意し、次から次へと標的を変えて攻撃を繰り出した。

 イーロン・マスク氏の力を借りて連邦政府の官僚組織解体を試みた。「解放の日」には世界貿易のルールを書き換えた。世界のあちこちで平和を強要し、従わなければ戦争だと脅しをかけた。

 しかし、そうした取り組みから最も利益を得たのは中国の習近平国家主席だった。

 中国は今年、関税を使って中国に恭順の意を表明させようとするトランプ氏の試みに抗った。そして形勢を逆転させ、実際には米国の方が習氏の政策に依存していることを暴露してみせた。

 21世紀の覇権を争う戦いのこのラウンドは、中国の勝利に終わった。

製造業における中国の支配的地位は不動

 今年は、中国が工業を完全に支配する力を持っていることが明らかになった年だった。

 世界の製造業付加価値生産額における中国のシェアは3分の1を超えており、世界のサプライチェーン(供給網)を一夜にして混乱させる力を持つ。

 環境技術では、太陽光発電パネル、風力発電タービンおよび電気自動車(EV)の原材料、部品、完成品の60~80%を中国企業が供給している。

 人工知能(AI)においても、米国が妨害しようと最大限努力しているにもかかわらず、中国に何ができるかがDeepSeek(ディープシーク)によって明らかになった。

 新薬開発においても、中国の医薬品メーカーが行う臨床試験の件数は米国企業のそれに近いレベルに達しており、試験のスピードでは中国の方が上回っている。

 20年前には、西側企業が安い生産コストと巨大な市場に目をつけて中国に投資していたが、今ではここに研究施設を作っている。

 習氏は2025年、中国の支配力を富の源泉としてだけではなく、権力の源泉としても利用することを厭わない姿勢を示した。

 レアアース(希土類)の輸出制限は、他国の対中依存を中国が兵器として利用できることの一例だ。

 オーストラリア戦略政策研究所が今月公表した調査結果によれば、重要な科学論文のシェアで計測する限り、中国は74の研究分野のうち66分野で世界をリードしている。

 ここにはコンピュータビジョン(コンピュータによる画像認識)やグリッド統合(再生可能エネルギー源などを既存の電力系統に統合すること)など、中国が牛耳る分野が20以上も含まれている。