「トランプ口座」の方向性は正しい

 さて、これは荒唐無稽な話とは言い切れないのではないかとも思っています。というのも、最近こんなニュースがあったからです。

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 これは、米国で生まれた赤ちゃんに1000ドルのインデックス投信をプレゼントするというものです。1000ドル(約16万円)ですので規模的には上記案とはだいぶ隔たりはありますが、方向性は同じといえます。

 また、記事中では「MMFに比べてリターンの大きなもの」に限定されるとあり、MMFとはほぼ預貯金のようなものですから、明確に「貯蓄から投資へ」を意識した制度設計になっています。

 また、この「トランプ口座」の特設サイトでは、運用した額の期待値が明確に示されています。

 もらった1000ドルをそのまま運用すれば18歳時点で5800ドルに、毎年250ドル追加で積み立てれば2万700ドルに、毎年5000ドルを追加で積み立てれば30万3800ドルになることが期待されるという数値が大きく表示されています(5000ドルの追加積み立ては企業が負担する想定のようです)。

出所)「トランプ口座」のHPより

 もちろんトランプ大統領の個性による部分も大きいでしょうが、日本の行政はまずこうした金額の目安を大きくアピールするということをやりません。それは仮にうまくいかなかったときに責任問題になりかねないからで、「役所がこういう数字を示してはいけない」とたしなめるのが優れた役人と評価される風潮によるものです。

 しかし、NISAにしろ、こどもNISAにしろ、金融リテラシーのあまり高くない人にとっては、そもそもどのくらいうまみのある制度なのかが理解できないのではないでしょうか。行政がこのように明確に数値を示すことの効果は小さくないように思われます。

 もちろん、実現可能性の問題としては財源だけが問題なわけではなく、生まれた年が1年違うだけで600万円もらえたりもらえなかったりするのは不公平ではないかとか、600万円を目当てにこどもを作る家庭が激増して予算が足りなくなるのではないか(こどもが本当に増えるなら喜ばしいことかもしれませんが)とか、論点は山ほどあるわけです。

 それでも、アメリカの例にならえば、親の経済状況によって大きく左右されるこどもNISAになにかしらの補助をつけ、格差の固定・拡大を緩和することはありえるのではないかと思います。