2026年も金価格は強含みか

 繰り返しとなるが、国際決済の手段として地金は不向きである。収支を調整する際に最終的な現物の移送(現送)を伴うが、その際に天災や事故、強盗などの遭難に直面する可能性があり、それに対応するために多大なコストなどがかかるためである。それに、貴金属とはいえ、金そのものの価格変動リスクは大きく、上下が激しい。

 ドル決済網から締め出されたロシアは、新興国との間で金決済を試みているようだ。それまでの欧州連合(EU)に代わる貿易パートナーとなった中国をはじめ、インドや中東では、歴史的に金の信用力が強いため、金決済にも応じているとされる。ただし金の流動性の乏しさに鑑みれば、金決済はドル決済を十分に代替する手段になりえない。

 金価格は2026年も強含みとなるのではないか。少なくとも高値圏での推移が続くと考えられる。急騰はしなくとも、急落する可能性は限定的だ。その最大の理由は、米国のトランプ政権が引き続き不確実性をバラマキ続けることにある。いわゆる“相互関税”に違憲判決が下されても、トランプ政権は引き続き同様の措置を模索するだろう。

 中間選挙での敗北が視野に入れば、前回の任期と同様、トランプ政権は外交政策に注力することになるだろう。ロシア=ウクライナ戦争への介入のみならず、ベネズエラ、そして中国と、米国は既にさまざまな国に対して圧力を強めている。しかしその介入や圧力の在り方が新興国を中心とする各国の反発を招き、“ドル離れ”を促す公算が大きい。

 米連邦準備理事会(FRB)がトランプ政権の圧力を受けて利下げを進めれば、金融緩和とドル安の両面から金価格の上昇に弾みがつく。そもそも高インフレ下での金融緩和という矛盾した金融政策は、ドルの通貨としての信用力を削ぎ、ドル不安をさらに促すことになる。ドル不安の受け皿になり得るものは、やはり貴金属、それも金になりそうだ。

 金の価格が割高と考えられれば、銀やプラチナ、パラジウムに資金がシフトするため、そうした貴金属の価格も上昇するだろう。むしろ投機筋の流れはそちらに集中するかもしれないが、ドル不安を反映した実需買いという意味では、歴史的に信用力が高い金の方に軍配が上がる。時代の不安が続く以上、金はマネーを吸い寄せ続けるだろう。