「チャット」から「仕事」へ 自律型エージェントの衝撃
ハードウエアでのコスト競争力確保に加え、AWSがアプリケーション層で勝負をかけたのが「フロンティアエージェント」と呼ばれる新たなAIエージェント群だ。
これまでの生成AIは、人が指示を出して回答を得る「チャットボット」形式が主流だった。
これに対し、今回発表されたエージェントは、目標を与えられれば、たとえそれが曖昧であっても、自律的に計画を立て、ツールを使いこなし、数時間から数日間にわたって作業を継続できる点が特徴だ。
具体的には、ソフトウエア開発を担う「Kiro」、セキュリティ対策を行う「AWS Security Agent」、システム運用を行う「AWS DevOps Agent」の3種が投入された。
これらは開発チームの一員(チームメイト)として機能し、コードの修正やバグの発見、障害対応などを自律的に行う。
AWSのマット・ガーマンCEO(最高経営責任者)は、これらが単なる効率化ツールではなく、企業の生産性を根本から変える「堅牢な頭脳」であると強調する。
背景には、ソフトウエア開発現場における慢性的な人材不足と、複雑化するクラウド環境の運用負荷がある。AIを「道具」から「労働力」へと昇華させることで、これらの課題を一気に解決する狙いだ。
モデル開発の遅れ挽回へ 「Nova」拡充と独自データ活用
AWSは生成AIブームの初期において、自社モデルの投入が遅れ、米グーグルに先行を許したとみられてきた。
その劣勢を挽回すべく、今回投入したのが自社モデル「Amazon Nova(アマゾン・ノバ)」の次世代版「Nova 2」ファミリーだ。
推論能力(Reasoning)を強化し、テキストにとどまらず、画像や動画も扱えるマルチモーダル性能を高めた。
さらに、企業が独自のデータをモデルの学習プロセス(トレーニング)自体に組み込める新サービス「Nova Forge(ノバ・フォージ)」も発表した。
通常、AIモデルに自社知識を持たせるには、完成済みモデルを再学習(ファインチューニング)させる手法が一般的だ。
しかしNova Forgeでは、モデルの構築段階からデータを注入できるため、特定の業務領域に特化した、より精度の高いモデルを作成できる。
米CNBCによれば、利用料は年間10万ドル(約1500万円)からと安くはないが、ゼロからモデルを開発する数億〜数十億ドルのコストに比べれば廉価であり、特定業界の知見を持つ大企業などへの浸透を図る。