患者を救うか、安楽死させるかで、激しく対立する2人の医師。ブラック・ジャックは「いい加減、お前さんの勝手な判断で病人を殺すのはやめろ」と言い、キリコは「俺はな、苦しんでもがいて、そして死にきれない患者を楽にしてやってるんだぜ。感謝されているんだ」と反論する。
医療従事者の約6割「安楽死を幇助する可能性がある」と回答
世界は今、「死」をどちらの側に委ねるのか、という瀬戸際に立っている。
前述したようにスウェーデンでは安楽死は認められていない。だが、「安楽死」合法化に賛成と答える国民は、調査のたびに増え続け、今年3月の世論調査では、国民のほぼ80%が支持を表明している。
医療従事者の安楽死の容認に対する支持も非常に強く、医療従事者全体でも約8割(79%)が容認しており、特に看護師の支持(82%)が高い。
また、医療従事者の約6割が自身で安楽死を幇助する可能性があると回答しており、倫理的な葛藤がありつつも、現場での容認度が高いことが示されている。
安楽死の合法化に強力に反対しているのは、医師会と宗教界・倫理学者、障害者団体だ。
スウェーデン医師会は、以下の見解を示している。
「私たちの倫理規定では、医師は死を早めるような処置をとることは決して許されていません」
「私たちは安楽死に対して概して否定的な見方をしています。医療の役割は治癒、治療、ケアの提供、そして苦痛の緩和であると考えています」
北欧医師会の倫理委員会は今年、新たな共同声明で、安楽死と安楽死幇助に反対する姿勢を明確に示した。同会の倫理規定第2条には、「医師は人命保護の重要性を考慮し、死を早めることを目的とした措置を決して講じてはならない」と規定している。
世界医師会(WMA)も、「安楽死と医師による自殺幇助に関するWMA宣言」(2019年)で、安楽死と医師による自殺幇助から明確に距離を置く、としている。
とはいえ、「安楽死」の合法化を望む声は、高まる一方である。