「患者は、人生の最期に病気で亡くなったのです」
「息子が、自分が彼を殺したと思ったまさにその瞬間に、死が起きたのかもしれません。この患者のように脆い状態にあると、死はいつ訪れるかわからないものです」
【参考記事】
97-årige Rolf fick dödshjälp – nu berättar dömde sonen: "Hans sista önskan"(Dagens Nyheter、2025年9月27日付)
英仏などで「死を選ぶ権利」が認められる見通し
欧州では現在のところ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、ポルトガルが積極的安楽死を合法化している。スイスでは、自殺幇助が認められている。
フランスでは今年5月、安楽死幇助法案が国民議会で可決された。次の段階として上院での審議となっている。上院で可決されると、再び国民議会で可決されれば法律として成立することになる。
イギリスでも、英国下院で「終末期患者への自殺幇助法案」が可決された。上院での審議や国王の裁可など、さらなるプロセスを経ることになる。
日本や筆者の住むスウェーデンをはじめ、世界の大多数の国では、安楽死は認められていない。しかし現在、多くの国では、安楽死の合法化を認める流れは進んでおり、議論も盛んだ。
安楽死は「死の医療化(Medicalization of Death)」と言われる。
これは、「死」という、本来は個人的で自然なプロセスであるものが、医療システムと専門家(医師や看護師など)の管理下に置かれるようになる、という意味だ。つまり医師の役割が、病気を治療し生命を維持することから、患者の意思に基づいて生命を積極的に終わらせることにまで拡大されることになる。
安楽死賛成派と反対派の拮抗は、大雑把に言えば、手塚治虫の名作に出てくる天才外科医ブラック・ジャックと安楽死を信条とするドクター・キリコの対立に似ているかもしれない。