2000年代前半から「安楽死を認めてほしい」との声
スウェーデンでは2000年代前半頃から、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や末期がん患者が「安楽死を認めてほしい」と公的機関や政治家に訴える事例が報道された。しかし法的には認められず、患者はスイスなど国外で自殺幇助を受けるケースが散見される。
また、安楽死が認められないことから、薬の過剰摂取などで自殺したりするケースが相次いだ。
ここで、スウェーデンにおける安楽死関連の主要な出来事を時系列でみてみよう。
・2008年 アストリッド・リンドグレーン小児病院事件
ストックホルムのアストリッド・リンドグレーン小児病院で、脳障害を持つ早産児に対し致死量の麻酔薬チオペンタールを投与したとして小児科医が起訴された事件。医師は「乳児の苦痛を和らげるための処置」と主張。2009年、ソルナ地方裁判所は無罪判決を下した。
・2010年 麻痺女性の人工呼吸器停止
先天性の神経疾患を患い、6歳時から人工呼吸器を装着していた32歳の女性。本人が「治療をやめたい」と意思表示し、スウェーデン社会庁(Socialstyrelsen)が「本人の自己決定権」を認めた。病院は女性の人工呼吸器を停止させ、死亡させた。
Förlamad kvinnas respirator avstängd(Svenska Dagbladet、2010年5月6日付)
・2010年 ALS患者の自殺事例
70歳の男性がALSを患い、スウェーデン社会庁に「自殺幇助を認めてほしい」と手紙を送ったが認められず、男性は自ら命を絶った。男性の健康状態は非常に悪く、呼吸困難もひどくなっており、彼の兄は「耐え難い苦痛だった」と話している。
生前のメディアのインタビューやリビングウィル(生前遺言)の中で、男性は病院で人工呼吸器を装着して治療を受けなければならないのであれば、生きたくないと明言し、安楽死ができない場合、自らの意思で行動を起こすと宣言していた。
Dog efter begäran om dödshjälp(Aftonbladet、2010年3月23日)