「私は、他の誰も苦しみから救えない状況から、1人の人間を解放した」
「私は違法なことをしていないと考えている。むしろ、この行為を通して、私が医師免許を失うことになるのかどうか、法的な判断を仰ぎたい」
同医師は2022年、医師免許を失っている。が、彼のもとには今でも、多くの患者が助けを求めて連絡してくるという。
【参考記事】
Läkare hjälpte ALS-sjuk man att dö (SVT Nyheter、2020年7月15日付)
合法化の遅れがグレーゾーンを生み出す現実
かつてスウェーデン社会庁長官や国立医学倫理評議会の議長を務めていたシェル・アースプルンド氏は「医師グループは意見が変わりつつあり、現在では賛成と反対が50対50に分かれている」「スウェーデンでは医師が安楽死を実践しているという噂はよく聞いている」と語っている。
スウェーデンや日本をはじめとする安楽死の非合法国において、安楽死を巡る問題は、もはや抽象的な倫理論争の段階を超え、深刻な「死の医療化」の現場として現れている。
スウェーデンでは、国民の約80%が安楽死を支持し、「個人の自由」や「選択の自由」という国のイデオロギーを体現するかのように、自らの最期を決定する権利を求めている。しかしその声は、「治癒、治療、苦痛の緩和」を役割とする医療の伝統的倫理、特に医師会の強い反対によって阻まれている。
この合法化の遅れが、現実には、家族や医師による非公式な「安楽死幇助」という形で、法的なグレーゾーンを生み出している。致死量投与の依頼に応じた家族が「同情的な動機」で減刑されたり、幇助した医師が免許を失いつつも「人を苦しみから解放した」と主張したりする事例は、現行法が最期の苦痛を取り除くという人間の普遍的なニーズに応えられていない現状を浮き彫りにしている。