英国のスターマー首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
わずか10年で終末期患者の死を巡る政治判断が激変
[ロンドン発]英イングランド・ウェールズの終末期患者に死を選択する権利を認める法案が6月20日、23票差で下院を通過、上院での審議が始まった。同様の法案は2015年、212票差で否決された。わずか10年で終末期患者の死を巡る英国の政治判断が激変したのはなぜか。
死亡幇助法案では(1)18歳以上の終末期患者、(2)十分な情報に基づいた意思決定を行う精神的能力がある、(3)他人からの強要や圧力を受けていない、(4)6カ月以内に死亡が見込まれる、(5)2人の医師が適格と判断している――など厳格な要件が課せられている。
日本では医療従事者が終末期患者に致死薬などを投与するのを「積極的安楽死」、医療従事者から処方された致死薬を終末期患者が服用して自ら命を絶つのを「自殺幇助」、延命のためだけの治療を止めて死期を早めるのを「尊厳死(消極的安楽死)」と区別している。
英国の死亡幇助は自殺幇助に当たり、現行では1961年自殺法に基づき最長14年の禁固刑が科せられる。イングランドとウェールズの検察庁によると2009~24年に187件の自殺幇助事件が送検され、36件は警察が取り下げ、127件は不起訴、起訴されたのはわずか4件だった。