政府は緩和ケアと社会福祉の問題を解決すべき

 終末期でないのに死亡幇助を選んだ人の4分の3以上が障害者支援を必要とし、3割近くが最貧困地区で暮らしていた。長期ケアを拒否するホームレス、重度の肥満女性、わずかな政府支援しか受けていない負傷労働者、未亡人らが死亡幇助を望み、現場の医師を苦しめていた。

 死亡幇助反対の英国団体「ケア・ノット・キリング」の調査では60%が原則無償のNHS(国民保健サービス)は最低水準にあり、死亡幇助を合法化する時期ではないと回答。65%が合法化を検討する前に政府は緩和ケアと社会福祉の問題を解決すべきだと答えていた。

 ゴードン・ブラウン元首相(労働党)は「代替の選択肢、つまり質の高い終末期ケアを受ける自由がなければ実質的な選択の自由は存在しない。患者が親族の介護の負担を軽減するようプレッシャーを感じるようになれば、一種の強制になる」と警告する。

 導入後10年間で最大2万8317人が死亡幇助によって死を迎えると推定されている。初年度の647件から2038年には4500件以上に増加する。1件につき1万5000ポンド(約296万円)で、NHSは最初の10年で4億2500万ポンド(約838億円)の費用を負担する可能性がある。