アバンギャルドなギタリストとイケメンボーカリストの邂逅

 VIRUS、media youthと、エクスタシーレコードでも異彩を放つバンドで活動してきたKIYOSHI。HR/HMを土台に確かなテクニックを持ち、アバンギャルドにプレイするそのセンスは、エクスタシー内でも唯一無二の個性を放っていた。そして、media youthのメジャー2枚目のアルバム『SPIRAL COLORS』(1996年)では、ソングライティングセンスが爆発。その直後にhideソロツアー『PSYENCE A GO GO』(1996年)参加という流れも納得である。

 hideツアーでは“オレンジ色のニクイ奴”という、『夕刊フジ』さながらの異名と、確かなテクニックもさることながら、“両手離し奏法”という前代未聞の“魅せるプレイ”でギター少年たちの目を釘付けにした。そうしたhide with Spread Beaverでの活動を経て、旅立ったhideへ捧げる形で制作されたmedia youthの楽曲「キミの未来」(1998年リリースシングル)では、ダウンチューニングを用いた分厚くヘヴィなギターリフと美麗なメロディの融合を果たし、media youthの新たなアイデンティティを確立した。

 同曲はサウンド、構成、アレンジすべてにおいて、90年代ヴィジュアル系ヘヴィロックにおける最高峰のひとつであると個人的に思っている。しかしながら、media youthはこの方向性でのアルバムを制作せずに解散に至ってしまった。であるから、KIYOSHIがこの先やろうとしていたヴィジュアル系ヘヴィロックを体現したのが、このmachineだったのではないか? と思わずにいられない。

 片やPENICILLINは、TBS系アニメ『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』オープニングテーマの「ロマンス」(1998年)が売上65万枚の大ヒット。西城秀樹から氷室京介、そして清春と、脈々とシーンに受け継がれてきた英語風発音のボーカルはHAKUEIで極まったと言っていい。しゃくりとビブラート、ファルセットまでのクセを武器としたボーカルスタイルは、その容姿端麗なシルエットとともに“ヴィジュアル系っぽいボーカル”というパブリックイメージを世間に植え付けた。

PENICILLIN「ロマンス」(MV)

 PENICILLINはヴィジュアル系バンドとしての人気はもちろんのこと、各メンバーのキャラクターを活かしたソロ活動やトーク力を武器に、自身のテレビ番組『ペニシリンSHOCK』(テレビ埼玉)を持つなど、マルチに活動。反面でHAKUEIは「バラエティを見るのは好きだけど、出るのは大嫌い」と同番組にほとんど出演していない。

 そんな硬派なHAKUEIだからこそ、PENICILLINにおける、いい意味での“お茶の間に浸透した歌モノヴィジュアル系バンド感”を、KIYOSHIのソングライティング超ドンシャリ(高音と低音が強調された音)最先端ギターサウンドで差別化した、それがmachineであったようにも思う。

 両者はティアーズ音楽事務所の所属であり、お互いが惹かれ合うのは自然な流れであったようにも思う。ちなみにPENICILLIN、media youth、Sleep My Dearが、ティアーズ3大バンドとも呼ばれており、ヴィジュアル系ブームの一翼を担っていた。