2025年1月29日には全国発売されたアナログレコード『unreleased』のジャケット写真

(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回は2024年に再始動を果たしたユニット・VINYL。hideの立ち上げたレーベル「LEMONed」の中でも異彩を放っていた彼らは、再始動でどんな音を奏でるのか? (JBpress)

25年ぶりに再始動

 2024年にまさかの再始動を果たしたVINYL。今年3月のライブではサポートを務めるValentine D.C.のベーシストJUNが、2023年10月29日に急逝したX JAPANのHEATHの愛用ベースを持ってステージに上がることが事前に告知され話題になった。

 VINYLは、黒夢のレコーディング中に脱退し、その動向に注目が集まっていたギタリスト臣こと鈴木新と、D’ERLANGERの2代目ボーカルであり、STRAWBERRY FIELDSを解散後、表舞台から姿を見せていなかった福井祥史の2人が組んだことで、大きな話題を呼んだユニットである。

 VINYLはhideなくして語れないだろう。多くの音楽ファンがVINYLを知ったのはhideが掲げた『LEMONed』というコンピレーションだった。

hideの立ち上げた「LEMONed」

 ZEPPET STOREのインディーズ1stアルバム『Swing, Slide, Sandpit』を偶然聴き、その音楽に衝撃を受けたhideは彼らを世に広めるために「LEMONed」を立ち上げる。音楽のみならずアートやファッションなど、単純に“良い”と思ったモノや人を集めていくこのLEMONedについて、hideは“レーベル”という言葉を用いていなかった。そんな得体の知れないLEMONedのお披露目作品、4アーティスト収録のコンピレーション『LEMONed』がCD、ビデオで1996年5月22日にリリースされた(LPは10月23日リリース)。

 このオムニバスには聴いたことのないようなハイセンスな音楽が詰め込まれていた。ZEPPET STOREと、LEMONedのアートディレクションを担当したアートユニット、t.o.Lのセルフプロデュースバンド、tree of life。その中で1曲だけ異質な音楽があった。

 音数の少ないバンドサウンド、ハードなギターが耳を襲う。極度に深く掛けられたディストーションギターは音が潰れているようにも聴こえるし、がなるようなボーカルも日本語のようで何語なのかわからない。これはハードロックなのか、オルタナティヴロックなのか、とにかくハイテンションでフルスロットル、そんな言葉が似合う音楽だった。サビだけはとにかくポップで、明瞭な日本語が踊っている。それが、VINYLの楽曲「BE」だった。

 hideはギクシャクした発音を持った熟語や慣用句を使い、さらにイントネーションやアクセントをズラすことで、日本語を英語風に聴かせることを得意としていたが、「BE」に登場する〈照魔鏡〉〈カッコマン〉という福井のワードセンスも冴え渡っていた。平歌をそうした独特の言葉選びと発音で、日本語ではないように聴かせていたのだ。

『LEMONed』のアーティストは2曲ずつ収録されていたが、VINYLの破壊力を知らしめるには「BE」1曲で充分だった。これがあの福井と鈴木というレジェンド2人によるユニットだったとは……。