歌モノのポップロックに弾きまくりのギター
VINYL結成の経緯についてはソロ活動を模索していた鈴木が、福井に声を掛け、そのことを当時の所属事務所ヘッドワックスオーガナイゼーションの社長であったhideに話したところ、「すぐ一緒にやれ」と言われたことを、後年明かしている。
さらに同年9月に千葉マリンスタジアムで行われた、LEMONedの決起集会ともいえる『hide Indian Summer Special』では、ベースにSEELA(ex. D’ERLANGER)、ドラムに池畑潤二(ex. ルースターズ)という豪華なサポートメンバーを迎えたライブを展開。暴れに暴れたパフォーマンスも大きな話題になった。そして1997年9月、日清パワーステーションにて初ワンマンのコンベンションライブを成功させ、11月に1stシングル『とまらない鼓動』でメジャーデビューする。同曲は本来1996年8月にMCAビクターよりリリース予定であったが、ニュートーラスへ移籍。再録されてリリースされている。
同曲が収録された1stアルバム『Go to VINYL』は、1997年12月20日リリース。白井良明(ムーンライダース)をプロデューサーに迎えて制作された。「とまらない鼓動」や、のちにシングルカットされた「20世紀のマスタード」、攻めに攻めまくるアッパーなナンバー「逃げろ!」、デジタルダンスチューン「Dance on me」など、バラエティに富んだ楽曲が詰め込まれている。
歌モノのポップロックに軸足を置きながらも、ハードロック&ヘヴィメタルな弾きまくりの鈴木のギターが圧巻だ。真空管アンプフルテンさながらの豪快なディストーションが猛り狂うバイトサウンドで、ヘヴィリフからエッジィなキザミ、シュレッドなギターソロなど、華麗で鮮やかなプレイを至るところで聴かせている。黒夢では影を潜めていた鈴木のメタルルーツを全開にしたギタープレイが堪能できる。これだけ弾きまくれるのは福井の強靭なボーカルがあってこそのものだろう。
サウンドもプレイもこんなにもギターが前面に出ているにもかかわらず、はっきりと聴こえる福井のボーカルが凄まじい。自由気ままに書かれた歌詞と野生味に溢れた野太く滑舌の良い声は、同シーンのバンドには見られないスタイルである。STRAWBERRY FIELDSのフロントマンと、黒夢のギタリストが、新たにこうした音楽をやっていることが、誇らしく思えたものである。