自律的マネジメントがなければ主導権は機能しない
職場からの連絡に対して認識しているかどうかを縦軸、それに対してレスポンスするかどうかを横軸とすると、勤務時間外の働き手の対応は大きく3つに分類できます(別掲表参照)。

職場からの連絡を認識し、レスポンスを行う場合は「業務受諾」です。勤務時間外でもすぐに対処した方が良いと自分で判断したり、緊急性が高い場合などについては業務受諾します。ただし、原則として業務した時間については賃金が発生することになります。
職場からの連絡を認識しつつもレスポンスしない場合は「業務保留」です。内容を把握した上で次に勤務する際に対処すれば問題ないと判断できるなら、連絡に応じることなく業務保留すれば済みます。
ところが、もし連絡を受けた側がレスポンス主導権を持っていないと、業務保留は意図的な無視であり「業務拒否」したと見なされてしまいかねません。連絡を受ける側が上司の場合など、連絡する側より上の立場であればつながらない権利が問題になりづらいのは、レスポンスするか否か、マイナス評価を気にせず自分で決められるからです。
そして、職場からの連絡を認識していなかった場合は、そもそもレスポンスのしようがないため「業務不可」となります。つながっていない世界であれば、勤務時間外の対応の大半は基本的にここに分類されました。
良くも悪くもつながりを断絶することが難しくなった現代社会において、つながらない権利についてのガイドライン策定や法制化は、仕事の連絡を受ける働き手側のレスポンス主導権を保障するものである必要があります。
そのために職場では、個々の働き手が担当する業務をできる限り自身で完結できるよう、自律的マネジメントが可能となる業務体制の構築に取り組まなければなりません。
上司の指示がなければ、出社しても今日は何に取り組めばよいのか分からない。仕事が終わったつもりでも、上司に確認しないと帰宅してよいのか自分で判断できない。そんな他律的マネジメントが標準となっている職場で働く人が、勤務時間外のレスポンス主導権を握ることなど不可能です。
つながらない権利をめぐる課題は、単に勤務時間外の連絡を断つか否かの範囲に留まるものではありません。働き手が仕事を主体的にコントロールできる職場環境をどのように構築していくかという、業務体制の根本的なあり方を改善する必要性が問われていると言えるのではないでしょうか。