トランプ関税と「戦略的自律性」
トランプ氏は大統領選期間中から「インドがロシア産原油を買うなら代償を払わせる」と公言。11月からロスネフチ、ルクオイルなど主要ロシア石油企業と関連タンカーへの制裁も本格化させた。表向きの狙いはロシアのエネルギー収入を削ぐことだが、いくつかの思惑がある。
まずインド経由でロシア産原油が精製品として西側市場に逆流する回路を断つ。次にインドの輸入元を中東や米国にシフトさせ、エネルギー安全保障の面でも米国との相互依存を高める。第三に「ロシアに甘い中立国」とみなされてきたインドに代償を負わせる――ことだ。
モディ外交のキーワードになっているのが「戦略的自律性」。冷戦期からインド外交の基底にある「非同盟」の現代版だ。米中対立が激化し、ロシアがウクライナ戦争で西側と全面的に衝突する中で、インドはどちらの陣営にも完全にはくみしないとの立場を貫く。
22年9月、ウズベキスタン・サマルカンドで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議でモディ氏はプーチンに「今日の時代は戦争の時代ではない。民主主義、外交、対話が世界を動かすと何度も電話で伝えてきた」と告げた。このフレーズは国連総会でも再三引用された。