原油が膨らませた印露貿易の歪み

 在露インド大使館によると、二国間貿易額はコロナ危機前の101億ドルから24年度には過去最高の687億ドルに拡大。インドの輸出48.8億ドルに対し、ロシアからの輸入638億ドルと極端に偏っている。両首脳は歪みを是正して「貿易額1000億ドル」の目標を掲げた。

 シンクタンク、カーネギー・インドによると、インドは米中に次ぐ世界3位の原油消費国。今年、消費量は2億6570万トンに達し、年率3.7%で増加する見込みだ。インドは必要量の89%を輸入に頼らざるを得ない状況だ。両国間の貿易拡大を牽引したのもロシア産原油。

 ウクライナ全面侵攻前、ロシア産原油がインドの輸入全体に占める割合は2.5%。しかし米欧の制裁でロシアはアジアへの原油輸出を値引きして大幅に増やした。その最大の受益者がインドで、ロシア産原油が占める割合は22年度21.6%、23年度には35.9%に跳ね上がった。

 トランプ関税は決定打ではないものの原油輸入量は減り始めており、じわりとインドの行動変容を促している。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、印露の外交関係はインドが独立する直前の1947年に遡る。インドの反植民地革命家と旧ソ連共産党の間には以前から繋がりがあった。30~40年のインド国民会議の指導者はソ連計画経済による急速な工業化を称賛した。

 冷戦下、ニキータ・フルシチョフはインドが西側諸国と資本主義モデルに不信感を抱き、社会主義原則に基づき特定の経済政策を策定したことからインドを「自然な同盟国」とみなした。経済的自立を目指してソ連の投資を歓迎し、その5カ年計画を経済計画モデルの基礎とした。