八方塞がりのドイツ、メルツ首相(写真:ロイター/アフロ)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
欧州経済の雄であるドイツ経済の不振が続いている。
ドイツ産業連盟は12月2日に公表した報告書で「経済がフリーフォール(自由落下)状態にある中、政府は産業を救うための取り組みを強化するべきだ」と訴えた。
経済は「フリーフォール」状態
ドイツ化学業界の11月中旬の発表(10月の受注残が約30年ぶりに最低水準を更新した)は衝撃的だった。製造業の原料となる化学品が低迷しているため、「ドイツ産業は非常事態にある」との危機意識が一気に広がった。
ドイツ商工会議所も11月上旬「企業投資は依然として新型コロナウイルスのパンデミック前の水準を約10%下回っている」と危機感を露わにしている。
ドイツ経済の足を引っ張っているのは構造的な問題だ。
最低賃金は国際的に最も高い水準にあり、電気料金もハンガリーに比べ4倍も高い。煩雑な行政手続きが災いして国内総生産(GDP)が3%も失われているとの指摘もある。手厚い社会福祉制度の見直しも待ったなしの状況だ。
中国企業との競争激化も頭の痛い問題だ。
中国電気自動車(EV)企業の台頭などでドイツ自動車産業の雇用は10年以上ぶりの低水準に落ち込んでいる。ドイツ政府のデータによれば、9月末時点の自動車産業の雇用者数は72万1400人と2011年半ば(71万8000人)以来、最低となった。
ドイツ政府は「中国依存が経済的破局を招く恐れがある」と警告を発しているが、ドイツ企業の中国離れは容易ではないのが実情だ。
八方塞がりのドイツ経済にとって頼みの綱は財政支出の拡大だ。