「粗悪ローンが急増している」

 S&Pグローバルが13日に発表したデータによれば、米主要企業の今年1~10月の倒産申請件数は655件となり、過去15年間で最多を記録する勢いだ。プライベートクレジットの焦げ付きが今後、急増する可能性が排除できなくなっている。

 金融業界でプライベートクレジットに対する警戒が強まる中、危機感を最も露わにしているのが債券運用企業「ダブルライン・キャピタル」のガントラックCEOだ。ガントラック氏は17日「粗悪ローンが急増しており、流動性が低いプライベートクレジット市場でパニックが起きかねない状態にある」と悲観的な見方を示した。

 世界の金融当局も警戒モードに入りつつある。  

 世界各国の金融当局で構成する金融安定理事会(FSB)は20日に公表した20カ国・地域(G20)首脳宛の書簡で「プライベートクレジット市場の動向を監視する必要がある」との警告を発した。

 資金の流入が途絶えれば、バブルが崩壊するのが世の常だ。

 頼みの綱であるプライベートクレジット市場の変調が、前述のダリオ氏が指摘する「AIバブル崩壊のきっかけ」になってしまうのではないだろうか。 

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。