沈静化するにはまだまだ時間が

 そのような中で、日本産水産物の輸入停止である。今後、対日批判がさらに高まれば、短期滞在ビザの復活、レアアースの輸出規制なども実施される可能性がある。そうならない前に、何とか事態を沈静化させることが必要である。

 2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件ではレアアースの輸出が停止された。2012年の尖閣諸島国有化の際は、日本製品のボイコットや反日デモが行われた。

 私は、台湾有事に関しては、「戦略的曖昧さ(Strategic Ambiguity)」が必要だと力説しているが、中国の政権幹部は、「その発言が最も困るものだ」と苦笑した。高市のように、台湾有事に武力介入すると明言してくれると、適切な準備ができるが、「曖昧な」態度に終始されると、対応のしようがないと言うのである。

 高市の側近で、戦略的曖昧さの重要性を説明する者はいなかったのか。

 中国政府の厳しい対日圧力で、観光業、水産業をはじめ、数多くの分野で被害が出始めている。これ以上経済への悪影響が続けば、財界も高市支持を撤回する可能性がある。

 日中政府間の対話のチャンネルは閉じられていないが、事態の沈静化には時間がかかりそうである。

 官民あらゆるルートを使って、対話を続け、民間交流を継続する必要がある。最終的には、高市答弁について、日本側は答弁維持、中国側は撤回と読めるような文言を練り上げるような形で、双方のメンツを立てるような道を模索する必要がある。

 そのためにも、日中関係に関する高市の本音がどこにあるかが鍵になる。首相に就任したら、それまでとは違う路線を選択しても何ら問題ではない。高市に対して、反中の保守派が「贔屓の引き倒し」とならないことを望むばかりである。