高市首相にメンツを潰された習近平

 習近平は、なぜ高市に怒っているのか。それは、メンツを潰されたからである。中国人はメンツを大事にする。

 韓国の慶州で行われたAPEC首脳会議で、10月31日に高市は習近平と会談した。約30分間の会談は友好的な雰囲気で行われ、両国が「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築することで合意した。

10月31日、韓国・慶州で開かれたAPECに際して首脳会談を行った高市首相と習近平主席=代表撮影(提供:共同通信社)

 ところが、11月1日、高市が台湾代表、林信義・元行政院副院長(副首相)、と挨拶し、会談、写真つきで、それをSNSにあげ、「日台の実務協力が深まることを期待します」と記した。

11月1日の高市首相のX(@takaichi_sanae)のポスト。これが習近平主席のメンツを潰した可能性が

 台湾はAPECのメンバーであり、日本の首相が台湾代表と会談するのは問題ないし、石破首相も会談している。このときは、何の批判もなかった。

 しかし、今回は、高市がこの会談の模様をSNSで拡散したことを問題にしたのであり、しかも、別の投稿で、林信義を「総統府資政(上級顧問)」と呼んだことも批判の的になった。中国は、今回は「猛烈な抗議」する旨の報道官談話を発表した。

 そして、中国外務省は、「『一つの中国の原則』に反し、台湾独立勢力に重大な誤ったシグナルを送るものであり、その性質と影響は悪辣だ」などと非難し、「日本側に厳正な申し入れと強い抗議を行った」ことを明らかにした。

 習近平にしてみれば、高市との会談をセットするという好意を示したのに、その直後に台湾代表と会談し、それをSNSで拡散したことは許しがたい暴挙であった。まさにメンツを潰されたのである。