この日のシンポジウムでは、娘を殺害された母親が、ビデオメッセージで自身の過酷な体験と思いを語りました。娘の遺体写真を「刺激証拠」としてイラスト化されたことで、判決にどのような影響を及ぼし、結果的に犯罪被害者遺族をどれほど苦しめているか……。当日のお話の中から、抜粋して紹介したいと思います。
暴力を受けた状況がありありとわかる亡くなった娘の被害写真がシンプルなイラストに
<遺族のメッセージ>
私は、当時22歳の娘を交際相手であった男からゴルフクラブで何十発も殴られて出血死を余儀なくされた殺人事件の遺族です。事件から2年経ってようやく刑事裁判が始まり、被害者参加をしました。
被告人は、娘が部屋で暴れたり叫んだりしたため、「静かにさせるために顔や頭を衣服で巻きつけ、それでも静かにしなかったのでゴルフクラブで何度かコツンと叩いただけ。殺しても構わないという意思はなかった」と言いました。
私は「娘が発見された時の遺体写真を見せてほしい」とお願いしました。どうしても真実が知りたかったからです。酷い状態で写っていたためショックでしたが、娘が受けた暴行の真実を見ることができてよかったとさえ思いました。
ただ、裁判の後で検事さんから聞いた話では、公判前整理手続きで裁判長が「写真を出してくれるな」と言っていたそうです。「刺激的な写真は、裁判員の心的負担が大きく、グロテスクな写真に免疫がない方々に出してもらっては困ります。その代わり、これだけ酷い傷を受けたということは、十分に裁判の中で明確にさせます」と言われていたそうです。
ところが蓋を開けてみたら、本当に簡単なイラストに傷の箇所が書いてあるだけで、傷の酷さの表現が全く追いついていない状況でした。被告人の証言が虚偽であることは、実際の傷の写真を見てもらえば一目瞭然だと思いました。
検察官が最後に娘の写真等を証拠請求してくれましたが、裁判長は「もういいでしょう」と言ったため諦め、証拠として採用されることはありませんでした。