業務をAIに任せるべきかを判断する「5つの基準」
これまでAIなしが当たり前だった職場は、AIリストラが進むにつれて徐々にAIを利用する場面が増え、やがてAIありきの業務体制へと変わっていきます。その流れに沿って生じる人員削減は、PCリストラ時代と同じく以下の3パターンが考えられます。
まず「タスク代替」。生成AIを使えば、基本的なプログラミングや文書作成といった高度なタスクも処理できます。さらなる技術発達や、1つの指示で複数の業務を処理できるAIエージェントが普及すれば、処理できるタスク範囲は飛躍的に広がっていきそうです。
次に「職種代替」。証券会社ではトレーダー職がAIに置き換わり、コールセンターでは徐々にカスタマーサービス職がAIチャットボットに代替されるケースも出てきています。ただ、職種を丸ごとAIで代替するのはタスクを代替するのに比べてはるかに難易度が高くなります。
最後は「適応不能」による人員削減。PCリストラが進められた際、パソコンの技能習得を拒絶したり手書き文書にこだわったりした人たちは職場から適応不能と判断されました。同様にAI技能の習得に消極的だったり、権利侵害などへの配慮がなされていてもAIの作成物を受け入れられないなど価値観の刷新が難しいと、適応不能と判断される可能性があります。
とはいえ、PCリストラの時もパソコンでの文書や資料作成の機会が増えたり、システム管理などの仕事が生まれたように、AIリストラが進む中で必ず新たな業務も生まれます。
海外ではホワイトカラー職が受けている影響が大きいためブルーワーカー資格の取得が増えているといった話も聞きますが、それらの業務を望まない人は、まずAIありきの職場で活躍できる備えを進めていくことが大切になってくるはずです。
タスク代替や職種代替の発生は、AIリストラが進むにつれて必然的に生じます。働き手にできる備えは、適応不能に該当しないことです。職場では情報収集や分析、仮説立て、進捗管理など、あらゆる場面でAI前提の業務体制構築が進むでしょう。そうしないと職場は、他社との競争の中で正確性・効率性・機能性の向上で後れをとることになるからです。
職場としてはAIにいつごろ、どの業務を、どれくらい任せるかが大切になってきます。すべてを丸投げしてしまうようなことをして誤りが生じた時、AIには責任がとれません。AIに任せた人間が、責任をとることになります。業務をAIに任せられるかどうかを判断する基準として重要になるのは、次の5つの観点です。
① 危険が生じることはないか
② 誰かが不快な思いをしないか
③ 誰かが不利益を被ることはないか
④ 法制度に反していないか
⑤ 社会通念に照らして問題はないか
これら5つの観点から人間がチェックして責任を持つことを前提に、任せられる業務はどんどんAIに任せていくと、やがてAIはいまのパソコンのように職場にあって当たり前のインフラになっていくと考えられます。
オフィスワークにとどまらず、接客、介護、教育など、あらゆる分野でパソコンとまったく無縁な仕事はいまや存在しません。AIリストラもそんなインフラ化へのステップであり、人員削減はその過程で伴う痛みです。その痛みを乗り越えるには、誰もがAIリストラへの備えを自分ごととして捉えることが何よりも大切だと言えるのではないでしょうか。
