AIで日米の企業に競争力格差が?(筆者がChatGPTで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

米国で進む「AIリストラ」

 米国で「AIリストラ」が話題になっている。文字通り、AIの導入によって業務が効率化され、不要になった従業員が解雇されるという現象だ。

 雇用動向調査を専門とする米国のコンサルティング会社、Challenger, Gray & Christmasの発表によれば、米国では2025年1~9月の累計で94.6万人のレイオフ計画が公表されており、これは過去5年で最高水準とのこと。

 そして同期間において、AIを明示的理由とする解雇は1万7375人、さらにそれとは別に、自動化やAIの実装を含む可能性が高いとされる「技術的更新」を理由とした解雇が2万219人と報告されている。

 個別の事例で見ても、注目を集めるニュースが生まれている。

 今年10月、Amazonがコーポレート部門の従業員約1万4000人(これはコーポレート部門従業員の約4%に相当する)の人員削減を発表したのだが、Fortune誌の報道によれば、CEOのアンディ・ジャシーが2025年6月17日の全社メッセージの中で、「AIを広範に使用することによる効率向上に伴い、結果として当社の法人部門の従業員総数は減少すると予想している」と明言し、AI効率化による人員削減があり得ることを示唆していたという。

 また同報道では、人員削減の総数は3万人に達する可能性があり、年末商戦後の2026年1月にも追加の削減が行われると予想されている。

 Amazonだけではない。Google、Meta、Microsoftといった業績好調な企業でさえ、AI投資のための資源再配分という戦略的判断のもと、数千人規模の人員を削減している。米景気や失業統計はまだそれほどの悪化傾向を示していないが、大企業はAIによる効率化を先取りする形で人員を削減し始めたと言える。

 一方、日本企業はどうか。解雇規制という制度的な壁があるため、米国のような大胆な人員削減は困難だ。もちろん「とにかく人員削減して効率化すれば良い」というわけではないが、日本で懸念されるのは、AI活用そのものが進んでいないという現実である。

 たとえば、インディードリクルートパートナーズが2025年6月に発表したレポートでは、日米の企業に雇用されている従業員にアンケートを行ったところ、仕事で「生成AIが導入済み」と答えた割合は米国で7〜9割だったのに対し、日本では3〜4割という結果が出ている。

 また、コンサルティング企業のPwCが発表した「生成AIに関する実態調査2025春」によれば、日本企業の生成AI導入度は平均的ながら、そこから効果が得られているという実感は低く、「期待を上回る」企業の割合は米・英企業の4分の1にとどまっている。

 生成AIの次に普及する先端AIとして期待されているAIエージェントについても、「AIエージェントを理解し、導入済み/導入を進めている」企業の割合についても、米国企業が62%なのに対し、日本企業は31%と低迷している。

 このまま手をこまねいていれば、米企業との生産性格差が拡大し、グローバル競争で決定的に後れを取る恐れがある。