“PCリストラ”の対象となった「タスク代替」「職種代替」「適応不能」

 人員削減はPCリストラが進められた際、大きく3つのパターンで行われました。

 まず、最も多かったのが「タスク代替」です。経理職が担当するタスクの一部は、Excelや会計ソフトなどが代わりに処理してくれるようになりました。決算期に複数人のヘルプ要員と伝票を見ながら手作業で電卓をたたいていた業務も、パソコンを使えば一人で担えたりします。

 次に「職種代替」です。文書を作成するワードプロセッサー専用機のオペレーター職は、誰もがパソコンでWordなどを使うようになるにつれて職種自体がなくなっていきました。受付職の仕事も、タッチパネル式のパソコン端末に置き換わったりしています。

 最後は「適応不能」です。手書きと紙の文化に慣れ親しんできたため、どれだけパソコンが普及しても抵抗を感じる人はいました。新たな技術習得には労力がかかりますし、頭の切り替えも必要です。

 また、顧客への挨拶などは手書きの手紙でなければ失礼にあたるといった価値観が抜けないとWord文書やEメールでのやりとりに馴染めなかったりします。パソコンありきの業務体制に適応できない人は、職場で活躍しづらくなりました。

 そして、Windows95の登場から30年が経ち、始まろうとしているのがAIリストラです。AIがいかに発達するかという観点に立つと、パソコンが浸透した時とは異次元の機能向上にばかり目が行きます。

 そのため、ありとあらゆる業務がAIに置き換えられるのではないかと、漠然とした恐怖や不安感が煽られがちです。しかし、AIにできる業務が増えたからといって、すぐAIに任せて良いとは限りません。職場にとって最も重要かつ見落とされがちな課題は、AIに何ができるようになるかより、何を任せられるようになるかです。

 任せる側には責任が伴うだけに、職場としてはいつごろ、どの業務を、どれくらいAIに任せていくかを慎重に判断することになります。AIリストラが進むとともにどんな形で人員削減が起きるのかをイメージするには、PCリストラでの経験がヒントになります。