「森林の守護者ルラ」と「開発主義のルラ」
ブラジルの石油・天然ガス生産量は石油換算日量516万バレルと初めて500万バレルを突破。ルラ大統領はクリーンエネルギーへの転換を進める財源として石油収入を利用する考えで、探鉱・開発を促進している。化石燃料収入はブラジルの社会政策を支える主要な財源の一つだ。
資源開発をやめると社会政策が崩壊する恐れがある。 ルラ大統領は巨大インフラこそ国民統合の手段という国家神話を受け継いでいる。国際社会では「森林の守護者ルラ」、国内政治では「開発主義のルラ」という矛盾した二重構造が存在する。
ルラ大統領がボルソナーロの森林破壊を確実に後退させたという点では評価できる。しかしブラジルの開発モデル(石油・鉱物・農業)は継続する。そのはざまに落ち込んだ最大の被害者である先住民がCOP30で声を上げた格好だ。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。






