富山県の山奥にある「レヴォ」の朝ごはん

年間8000人が訪れる富山の山奥レストラン

 富山県に「レヴォ」というオーベルジュがあります。オーベルジュとは、レストランに宿泊機能がついた施設のこと。ヨーロッパでは一般的ですが、日本でも最近増えてきました。レヴォの場合は料理店に3部屋のヴィラがついています。シェフの谷口さんが作る料理は、富山の食材しか使わない、ここでしか食べられないものばかりで、大勢の食通が絶賛しています。

 しかし、レヴォがあるのは南砺市の旧・利賀村という山奥。富山駅からレンタカーで1時間半もかかり、公共交通はありません。降雪量の多い富山県の中でも豪雪地帯で、1970年代までは一本道が通れなくなると、自衛隊が食料をヘリで投下したというほどの場所です。旧村の人口は400人ほどの過疎地域で、観光は一切ありません。

 しかし、レヴォを訪れる旅行者は年間8000人にも上り、そのうち1000人が訪日外国人なのです。単純計算で1日あたり3人近くの外国人が、レヴォを目指して富山県の山奥を訪れていることになります。

 いま、レヴォを訪れるような食感度の高い食いしん坊(そういう人たちのことをフーディーと呼びます)が日本の地方にあるおいしいレストランに注目しているのです。それは日本のフーディーだけでなく、世界のフーディーもそう。いまやネットで情報は瞬時に世界中に伝わりますから、おいしい店があるとわかったら、すぐに来るのです。

 日本の英字紙「ジャパンタイムズ」は2021年から「デスティネーションレストラン」を表彰しています。東京23区や政令都市をのぞく、地方にある「わざわざ食べるために訪れるべきレストラン」を毎年10カ所選んでおり、今年で50店になりました。審査員の一人は「毎年、素晴らしい店が増えるので、選ぶために訪れるのが大変」と嘆くほどです。