各国が公約通りNDCを完全実施しても2100年には2.3〜2.5度上昇
国連環境計画(UNEP)の『排出ギャップ報告書2025年版』によると昨年、世界の温室効果ガス排出量は二酸化炭素換算で過去最高の57.7ギガトン(前年比2.3%増)を記録した。そんな中で新しいNDCを提出したのは総排出量の63%に相当する60カ国のみだ。
各国が公約通りNDCを完全実施しても2100年の温暖化は2.3〜2.5度に達する。現行政策のままだと最大2.8度まで上昇する見通しだ。排出ギャップは依然として大きく、1.5度目標の達成には前例のない削減スピードと規模が必要になる。
ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は「各国が現在のNDCをすべて実行したとしても30年までに排出量はわずか約5%しか減らず、2.5度超の上昇コースを辿る。気温上昇を1.5〜2度に抑えるには毎年5%ずつ削減を達成する必要がある」と話す。
「科学は常に更新されるため、政策担当者には継続的な科学教育が必要。現行政策は最新科学に追いついていない。リスク認識を高め、科学主導の意思決定を進めるべきだ」とロックストローム所長は強調する。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。




