世界各地で地下水減少が加速

【新知見その4】気候変動と生物多様性損失の悪循環

 気候変動と生物多様性の危機は悪循環に陥っている。気温上昇と土地利用変化により植物種の多様性が減ると、森林や草地の炭素固定能力が低下し、さらに温暖化が進む。地球規模の植物多様性喪失は今後数十年で7〜146ギガトンの炭素放出を引き起こす恐れがある。

 多様な樹種を含む森林ほど炭素貯留量が大きく、単一植林は脆弱だ。果実を媒介する大型哺乳類や鳥類が減ると炭素蓄積力の高い樹木が再生できなくなる。生物多様性の保全と気候変動緩和を統合する政策枠組みが欠かせない。

【新知見その5】地下水枯渇の加速

 世界各地で地下水の減少速度が1980〜2000年代より速まっている。人口増加や農業灌漑の拡大に加え、気候変動による降水パターンの変化が補給を妨げる。衛星観測によればインド北部、中国華北平原、米国中央平原など主要農業地帯で年0.3〜1センチの地下水位低下が続く。

 地下水は干ばつ期の緩衝資源だが、過剰汲み上げは地盤沈下や塩水侵入を招き、沿岸都市のインフラを脅かす。持続可能な水資源管理には国境を越えた協力と気候適応策の統合が不可欠。適切な地下水回復政策の成果も見られるが、全体としては「水の臨界点」に近づきつつある。