熱ストレスが経済に深刻な影響を

【新知見その6】気候変動が拡大させるデング熱

 昨年、世界のデング熱感染者は過去最多の1420万人に達した。気温上昇が蚊の生息域と繁殖期間を拡大し、都市化や廃棄物処理の不備が感染拡大を助長した。ブラジルでは17都市が非常事態を宣言し、米国や欧州でも局地的な流行が報告されている。

(写真:kamitana/Shutterstock)

 デング熱やジカ熱を感染させる熱帯系の蚊は高温下で繁殖効率が上がり、感染期間も長期化する。50年までに熱帯以外の地域にも根付くとの予測もある。医療体制が脆弱な国では流行が医療崩壊を招く恐れがあり、気候変動が感染症リスクの世界地図を書き換えつつある。

【新知見その7】熱ストレスによる労働損失と所得減少

 気候変動に伴う熱ストレスで世界の労働生産性が大幅に低下。気温が1度上がるごとに熱帯地域の8億人以上が安全な作業環境を失い、屋外労働時間が最大で半減する。30年代には熱ストレスによる世界の国内総生産(GDP)の損失が1.4〜4.5%に達する恐れがある。

 影響は主に途上国で顕著だが、国際貿易やサプライチェーンを通じて先進国にも波及する。高温下では生産だけでなく健康被害や労災も増え、社会的不平等を拡大させる。作業スケジュールの変更、冷却インフラの整備が必要だが「適応」だけでは限界がある。