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(白石 拓:作家・サイエンスライター)

過去127年で最も暑かった今年の夏

 今年の夏(6〜8月)もかなり暑かったですね。どれくらい暑かったかというと、統計が開始された1898年以降の127年間で、最高の気温を記録しました。全国の平均気温平年差は+2.36℃となり、今年同様にそれまでの猛暑記録を更新した2023年と2024年の+1.76℃をさらに上回りました。

「平均気温平年差」とは、1991~2020年における30年間の夏の平均気温を平年値とし、その差をいいます。平均気温は、1898年以降継続して気象観測をおこなっている観測所の中から、日本列島の北から南まで、都市化の影響が小さいと考えられる15地点の気温データから算出されています。具体的には、網走、根室、寿都(すっつ)、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、宮崎、多度津、名瀬、石垣島が選ばれています。

【図表1】2025年夏の平均気温平年差
図中の数字は平年差(℃) 出典:気象庁「2025年夏(6月〜8月)の天候」

 図表1の日本列島は北から南まで平均気温平年差はすべてプラスになっており、九州の南半分を除き、ほぼ全土が赤く染まっています。今夏のうだるような暑さを、この図が裏付けています。

 日本の夏が頻発に35℃を超えて猛烈に暑くなり始めたのは1990年代半ば以降で、21世紀に入るとそれがますます顕著になってきました。今では、全国のどこかで40℃を超えたと聞いても、さほど驚きません。

 こうした気候変動を受けて、気象庁はそれまで一日の最高気温30℃以上の日をすべて「真夏日」と呼んでいたのを、2007年に35℃以上の日を「猛暑日」と定義し、予報用語に加えました。これは熱中症に対する注意喚起の意味を含めており、「熱中症」も同時に予報用語に加えられました。