海も陸上も炭素吸収能力が急低下

【新知見その2】急速に進む海面加熱と海洋熱波の激化

 23年春以降、13カ月連続で世界の海面水温が記録を塗り替えている。24年の平均海面温度は1981〜2019年比で0.6度高く、海洋熱波の頻度と持続期間は過去40年間で5割以上増加した。海面の加熱は台風やハリケーンの強度を増し、沿岸漁業や観光業を直撃する。

 地球規模でサンゴの大部分が同時期に白化する現象が観測された。実に4回目だ。温暖化した表層海水は二酸化炭素の吸収能力を弱め、海が本来担う炭素吸収源としての役割を失いつつある。海の加熱は気候変動そのものを加速する負の連鎖を引き起こしている。

(写真:d3_plus/Shutterstock)

【新知見その3】陸上炭素吸収源の弱体化

 地球の陸上生態系が吸収する炭素量は23年に急減。高緯度地域の広大な森林は地球全体の炭素吸収源として機能してきた。23年夏、カナダ全土に広がった森林火災の面積は日本の国土の半分以上に相当し、二酸化炭素排出量は欧州連合(EU)の1年分とほぼ同じ規模に達した。

 北半球の生態系では乾燥化と高温化により光合成が抑制され、永久凍土が融解し、二酸化炭素とメタンを放出する。森林が火災で炭素吸収源から炭素放出源に転じ、吸収力の減退が恒常化すれば、人為的排出を相殺する自然のバッファーが失われ、残存炭素予算はさらに縮小する。

(写真:Margo Photography/Shutterstock)