「ハイブリッド型」で日本は世界をリードできる
企業は、リモートワーク推進を「コロナ禍対応の一時的施策」として捨て去るのではなく、賃金戦略や採用戦略と同様に、人材戦略の中心に位置づけるべきである。企業の人材戦略の観点からみたリモートワーク推進の最大のメリットは、「潜在的な採用可能人材プール」を拡大できることである。
勤務地≒居住地という制約を除去することで、海外を含む他地域に居住している人材の力を活用する余地が生まれる。育児・介護との両立可能性の面でもリモートに分があり、そうしたニーズのある人材を取り込みやすくなる。また、オフィス回帰の流れが生じた結果として「リモートワーク可能」の価値が高まっており、それ自体が採用競争力を高める側面もある。
リモートワークは生産性向上と社会的包摂を同時に実現するイノベーションである。このイノベーションの恩恵を最も多く享受できるのは人口減少・高齢化による人手不足に直面する日本である。
別の言い方をすれば、リモートと出社それぞれのメリットを享受できる「ハイブリッド型」が基本という大まかな方向性のもとで、各企業が最適解を模索した結果として得られる国全体の「最適リモート比率」は、日本では他国より高くなるのではないかと筆者はみている。
「アメリカでオフィス回帰の流れがあるから、日本もそうしよう」などと他国の動向に流されてはいけない。官民一体となってリモートワーク推進に向けた取り組みを継続することが、日本経済の持続的・包摂的成長に貢献するはずだと筆者は考えている。