リモートワーク継続がオフィス回帰か、政府・企業に求められること

 日本の政府・企業には何が求められるだろうか。政府は、リモートワークの推進に向けた取り組みを続けるべきである。

 前述の研究が示すように、リモートワークは子育て世代や地方人材の労働参加を後押しする有効な政策手段である。人口減少・高齢化により人手不足が深刻化している日本では、働く意欲のある人全てに働いてもらえるような環境整備が重要であり、その意味でリモートワーク推進による就業機会拡大の重要性は他国よりも高いはずである。

 実際、「就業希望はあるが求職活動をしていない人」は2025年4~6月時点で約220万人存在しているが、そのうち約半分(約110万人)は、求職活動をしていない理由として、①育児・介護など、②健康上の理由、③近くに仕事がないという理由を挙げている(図表)。

図表:就業希望はあるが求職活動をしていない人数とその理由(出所:総務省)図表:就業希望はあるが求職活動をしていない人数とその理由(出所:総務省)

 これらの理由による就業希望者のうち一定割合は、リモートワークにより就業ハードルを下げれば働くことができる可能性があるとみられ、有力な追加労働力候補とみなすことができるように思う。

「地方創生」の文脈では、地方の人口減少(≒首都圏への人口流出)が問題視されることが多い。この観点でもリモートワーク推進には大きなポテンシャルがある。

 つまり、「恒久的なフルリモート」にコミットする企業が増えれば、そうした企業で働く限りにおいて居住地と勤務地を一致させる必要がなくなる。そうなれば、住環境が良好で、住居費の安い地方への移住を検討する人は増えるだろう。恒久的なフルリモートにコミットする企業に(例えば)税制優遇を与えるといったインセンティブ付けには一考の余地があると思う。