政策はどこまで妥協できるか

 公明党が連立を離脱した最大の理由は、政策の乖離である。高市は右寄りの保守派であり、リベラルをうたう公明党とは対極にあることが「離縁」をもたらした。

 公明党は「弱者の味方」をスローガンに、LGBTなどへの差別に反対し、夫婦別姓にも賛成である。また、外交では「平和の党」として、歴史認識をはじめ、中国との友好関係を維持してきており、首相の靖国神社参拝には反対である。さらに、外国人との共生を重視し、外国人排斥の風潮を危惧する。

 とくに、「クリーンな政治」を目指して、政治とカネをめぐる不祥事を許さず、企業・団体献金には厳しい規制を設けるように求めている。

 斉藤鉄夫委員長によれば、政治とカネの問題は、公明党にとっては「1丁目1番地」なのである。その意味で、旧安倍派の幹部で、2728万円(2018~2025年)を政治資金収支報告書に記載していなかった萩生田光一を幹事長代行に指名したことに、公明党は怒った。

 自民党と維新の連立が現実味を帯びてきているが、この政治とカネの問題で、両党は歩み寄れるのであろうか。維新は、企業・団体献金の全面禁止を求めており、公明党よりも厳しい姿勢である。自民党は、この要求は飲めないでろうから、妥協は困難である。

日本維新の会の吉村洋文代表(写真:共同通信社)

 さらに維新は、議員定数の削減も求めている。吉村代表は、これの「年内実現」を合意文書に明記しない場合には連立は組まないと明言している。自民党からしてみれば、かなり高い要求だ。

 一方、維新が要求する「副首都構想」や社会保障改革の実現などについては、自民党は受け入れ可能であろう。

 各党が自民党との連立を模索するとともに、野党で大同団結して政権交代を目指す動きもある。立憲民主党、国民民主党、維新の三党で手が組めるかである。

 立民と国民は、民主党から分裂して生まれた政党である。一緒になれない理由は政策の相違である。安全保障、エネルギー、憲法などの分野で、両者の主張はかけ離れている。憲法9条を順守し、防衛力の強化には消極的で、原発にも反対するのが立民だとすれば、より現実的で、むしろ自民党の政策に近いのが国民民主党である。

 この両党だけでも政策が一致しないのに、さらに維新が加われば、政策の乖離は広がる。

 立民の野田代表が言うように、政権交代の千載一遇のチャンスだとはいえ、この政策の違いを克服できるような政権運営ができるのであろうか。