鈴木明子 撮影/積 紫乃
(松原孝臣:ライター)
2025-2026シーズンは、いつもと異なる意味合いを持つ。4年に一度訪れる「オリンピックシーズン」だからだ。
ミラノ・コルティナオリンピックの出場枠は、男女各3。12月に行われる全日本選手権の優勝者が1人目として決定し、残る2枠は、全日本選手権の2位と3位、グランプリファイナルの上位2人、オリンピックシーズンのベストスコア上位3人など定められた基準の中から、総合的に判断して決定する。
選手にとって、大舞台への切符を懸けて臨むシーズン、男女シングルの展望は——プロフィギュアスケーター、振付師、解説者等幅広く活動する鈴木明子を訪ねた。
●【鈴木明子が展望する五輪シーズン:女子編】はこちら
1度目と2度目の違い
鈴木明子は2010年のバンクーバー、2014年のソチと、2度オリンピックに出場している。代表を目指せる位置で2度、オリンピックシーズンを過ごしている。
その経験を踏まえつつ、オリンピックシーズン特有の意味をこのように説明する。
「オリンピックは、最大の目標であり、4年間準備を積み重ねてきた選手や、自らの集大成と位置づける選手もいます。まさに人生を賭けた、スケート人生の総決算となるのがオリンピックシーズンだと思います。
私自身のことで言うと、1回目はオリンピックに行ったことがないのでどんな場所かも想像でしかないというか、とにかく自分が全力を出し切ってオリンピックに行きたい、ある意味怖さとかがなかったのかなって思います。でも2回目はオリンピックを知ってしまっているので、知っているからこそ怖かったというか。特に2度目はあまり状態が上がっていなかった中でシーズンを迎えていたので、焦りがあったり、行けなかったらどうしようという不安感だったりがあって、挑戦する立場で楽しめていたらよかったんですけど、そこまで至らなかった部分はあったかなと思います」
それでも2大会続けて代表の切符を手にすることができた要因をこう語る。
「全日本選手権に至るまでにもうすべてやり尽くして、人事を尽くして天命を待つじゃないですけど、最後の最後で自分を信じられるだけのことをしてきたからオリンピックにつながったのかなと思います。そこまで作り上げることができたのは、もちろん自分自身もですけど、周りのコーチだったり、会社のサポートだったり、すべての人のサポートがあって、“これでもう大丈夫だ”と心から思えたことで、最終的な勝負に挑むことができました。試合だけが戦いというよりも、そこに至るまでの無数の時間と積み重ねが一緒になって花開く瞬間。努力と支えがひとつになった時こそ、夢が現実になるのだと思います」
選手自身の取り組みは当然のこととして周囲も一体となって臨む大切さと、日々の過程の重要性がそこにうかがえる。
そんなオリンピックシーズンをどう見ているのか。まず男子について語る。