トヨタのクラウン・エステートPHEVで250kmを運転した。写真は、旅の途中に立ち寄った、アメリカンな雰囲気の飲食店の前にて(写真:筆者撮影)
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そうだ、「クラウン・エステート」にじっくり乗ってみようと思った。これまで、2022年発売の最新クラウン関連の取材をしてきたのだが、3月に発売されたエステートを公道で試乗していなかったからだ。都心から千葉県の外房を目指す250kmの旅に出かけてみると、試乗前に想定していなかった気づきがあった。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

クラウンは“オワコン”なのか

 今回、試乗したクラウンのグレードは「エステート RS」で、ボディ寸法は全長4930mm×全幅1880mm×全高1625mm、ホイールベースが2880mm。搭載するパワーユニットは2.5リッターエンジンのプラグインハイブリッドで駆動方式は4WD(四輪駆動)だ。 

 試乗の感想を紹介する前に、まずは新型クラウン登場の背景を振り返っておきたい。

 クラウンといえば、高度経済成長期から日本の高級車市場を牽引してきたトヨタブランドの最上級モデルである。だが、アメリカ生まれのレクサスが2005年に日本上陸を果たし、また企業のトップや国会議員、そして地方自治体の長などが乗る、いわゆる“黒塗り”や高級ハイヤーでは「アルファード」や「ヴェルファイア」が重宝されるといった時代の変化を受けて、市場からはクラウンの商品性が問われるようになった。

 なかには「クラウンは“オワコン”(終わったコンテンツ)」と批評する人もいたほどだ。

 そうした中、豊田章男会長(当時は社長)は「クラウン存続の意義をゼロベースで考えるべき」といった指示を、当時の次期型クラウン商品企画の担当者に出した。

クラウンが4WDへと進化したことの衝撃

 当初、第16代目クラウンは第15代目をベースとしたマイナーチェンジの方向が検討されていたため、商品企画や開発本部にとって豊田会長の指示は大きな衝撃だったと、トヨタ幹部は振り返る。

 結果的に、第16代目クラウンはクラウンの常識を打ち破る4WDへと進化を遂げた。

 トヨタが都内で2022年7月15日に実施した、新型クラウンワールド・プレミアを現地取材したが、新型クラウンが4WDになったことは、まさにサプライズであった。

 一部報道で「クラウンはSUVになる」と報じられたが、まさか4WDへ進化するとは、クラウンのオーナーとしての経験もある筆者も心底驚いた。しかも、これまでほぼ国内市場向けだったクラウンが北米市場などグローバルモデルとなることも分かった。