スズキ初のEV世界戦略車「e-ビターラ」プロトタイプに試乗した(写真:筆者撮影)
スズキ初の量産型EV「eビターラ」のプロトタイプに試乗した。場所は、千葉県の「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」。舗装路面のサーキットだが、直線では時速100キロ程度で走り、各コーナーでは高速道路や一般道をイメージした速度で走行した。クランクコーナーなど、市街地をイメージしたコース設定もあり、日常生活の中での使い勝手を検証した。その出来栄えについてレポートしたい。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
スズキのEV世界戦略第一弾の発表から2年
「eビターラ」という商品の本質を理解するために、EV市場の動向と、その中でのeビターラの存在意義から話を始めたい。
2023年1月、インド・デリー近郊で開催された「オートエキスポ2023」に、コンセプトモデルの「eVX」が登場した。当時の時点で2025年までの市販化を計画していた、スズキのEV世界戦略車第一弾のコンセプトモデルである。
鈴木俊宏社長は「スズキグループでは、地球温暖化の対応は企業活動における重要課題」という認識を強調した。
このコメントからは、商品性を強く押し出すとか、スズキ独自のEV事業戦略を推し進めるといった印象は薄く、あくまでも中長期的な視野で見て、スズキとしてEV市場への参入が必要不可欠であると捉えているような雰囲気を感じた。
筆者はこれまで、スズキに関する各種記者会見の場で、鈴木社長に、「スズキとしてのEVのあり方」について聞いているが、「社会インフラ全体の整備が先決」という姿勢を崩さなかった。
ここで言う「社会インフラ」とは、急速充電・普通充電の設備が整うだけではなく、電力需要全体におけるEVの立ち位置や、ユーザーや販売店がEVをどのように許容するのかという観点も含まれるものだと、筆者は理解している。
欧州、インドの順でeビターラを公開
日本では、2023年10月のジャパン・モビリティ・ショーでeVXが公開された。eVXの量産モデルが、今回試乗したeビターラだ。
スズキは、このeビターラを、2024年11月のイタリア・ミラノで世界初公開。生産はインドのスズキ・モーター・グラジャード社で開始し、2025年夏頃から欧州、インド、日本など世界各国で順次販売すると発表した。
その後、2025年1月のインド・デリーでの「オートエキスポ2025」でもインド仕様をお披露目している。
こうした情報公開の順番からも分かるように、スズキとしてはeビターラを、販売規模では欧州を優先しつつ、スズキの主要生産拠点であり、EV市場の拡大の伸びしろが大きいインドでの販売戦略も重視している。
試乗会場の袖ヶ浦フォレストレースウェイでの様子(写真:筆者撮影)