国交省のサイトでは「荷物そのものが自動輸送される道路へ」として、自動物流道路(オートフロー・ロード)の説明をしている(写真:国交省)
高速道路の中央分離帯や、長距離の地下トンネルなどを通って、専用パレットに積まれた荷物が24時間体制で無人で自動輸送される——。『鉄腕アトム』や1970年の大阪万博、さらに『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』に登場しそうな光景が、およそ10年先の2030年代をめどに実現するかもしれない。東京〜大阪間の高速道路で、社会実装される可能性が出てきたのだ。近年よく実証実験などで目にする大型トラックの自動運転とは異なり、荷物そのものを自動で輸送するシステムだ。国はこのプロジェクトを「自動物流道路(オートフロー・ロード)」と命名し、本気で形にしようと考えている。いったいどんなプロジェクトなのか、今回はその概要を紹介する。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
「自動物流道路」が必要な3つの事情
国土交通省は7月31日、第10回『自動物流道路に関する検討会』において、最終とりまとめを公表した。それによると、東京〜大阪間の「自動物流道路」を実現する背景には、大きく3つのポイントがあるという。
1点目は、いわゆる2024年問題だ。2024年からの労働時間規制や担い手不足により、2030年度には、2024年度と比べて輸送力が34%も不足すると試算されている。
2点目は、宅配サービスの拡大によって、物流の小口配送が急速に増加していること。特にコロナ禍以降は荷物の量が大きく伸び、2022年には年間50億個に達したという。
3点目は、CO2排出量の削減だ。国は2050年までにカーボンニュートラルを目指しているが、物流部門は排出量全体の10%を占めている。
こうした中、国の社会資本整備審議会・道路分科会・国土幹線部会の「高規格ネットワークのあり方中間とりまとめ」において、「自動物流道路」の構築に向けた検討が必要とされ、検討会が2024年2月から始まったというわけだ。
では、具体的にどのような形を目指すのか。