出版取締令に違反

 寛政2年(1790)、改革の一環として、町奉行所から5月に書物問屋仲間、10月に地本問屋仲間、11月に小売・貸本屋に対して、出版取締令が発せられた。

 これにより、好色本は絶版。書物や草双紙などの新規出版が禁止となり、どうしても出版したい場合は町奉行の許可を得なければならないなどが定められた。

 この取締の効果を上げるための見せしめとして摘発されたのが、蔦重と、古川雄大が演じる絵師で戯作者の山東京伝(北尾政演)だといわれる(今田洋三『江戸の本屋さん』)。

 寛政3年(1791)正月に蔦重のもと刊行された山東京伝の3冊の洒落本(遊里小説)『仕懸文庫(しかけぶんこ)』、『錦之浦』、『娼妓絹籭(しょうぎきぬぶるい)』が、風俗や秩序を乱すと認定。出版取締令に違反するとされたのだ。

 3冊の洒落本は絶版となり、山東京伝は手鎖50日(両手に手鎖をはめ、自宅謹慎)。蔦重は、身上に応じた重過料(罰金刑)に処せられた。

 蔦重は財産の半分を没収されたといわれる(松木寛『新版 蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者』)。