吉原遊郭の名残である五十間道(衣紋坂) 写真/a_text/イメージマート

(鷹橋忍:ライター)

今回は大河ドラマ『べらぼう』において、妖艶な魅力で男性たちを操る、福原遥が演じる誰袖(たがそで)を取り上げたい。

狂歌女郎

 誰袖は、吉原の妓楼・大文字屋が抱える女郎である。

 天明3年(1783)に蔦重が発行した『吉原細見五葉枩』にはその名が見え、名の右上には小さく「よび出し(呼び出し)」と記されている。

 花魁は高級女郎全体を表す通称に近く、最高級の女郎は「昼三」と呼ばれる。昼三とは、昼間の揚げ代が「三分」を意味する。

 呼び出しは、昼三の中でも最高級の女郎を指す(田中優子『遊廓と日本人』)。

 すなわち誰袖は、最高級の中でも最高級の女郎なのだ。

 誰袖は「狂歌女郎」としても知られる。

 桐谷健太が演じる大田南畝(狂名は四方赤良)と浜中文一が演じる朱楽菅江(あけらかんこう)共編の『万載狂歌集』の巻第十二に、一首入っている。

 これにより、誰袖はたちまち有名になったという。

 だが、誰袖の名を最も世に広めたのは、栁俊太郎が演じる土山宗次郎による身請けだろう。